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出張訪問サービス業のための原価計算の基本とやり方

公開日

2024/05/09

更新日

2026/08/14

清掃業や家事代行業などの出張訪問型サービス業では、案件ごとの原価計算ができておらず、どれだけ儲かっているのか把握できていないという事業者が少なくありません。売上は月々確認していても、そこにかかった原価まで案件単位で計算できていないと、忙しく動いているのに手元にお金が残らない状態が続いてしまいます。

原価計算という言葉は知っていても、人件費や移動にかかるコストをどう配分すればいいのかわからず、結局は感覚で見積り金額を決めてしまう人も多いはずです。この記事では、出張訪問型サービス業に特有の原価の内訳から、エクセルやアプリを使った具体的な計算方法までを解説します。

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原価計算とは何か

原価計算とは、製品やサービスを提供するためにかかった費用を洗い出し、案件や商品ごとに集計する手法です。もともとは製造業で発展してきた考え方ですが、飲食業やサービス業でも見積り金額の根拠を作るために広く使われています。

原価は大きく直接費と間接費に分けられます。直接費は特定の案件に直接紐づく費用で、材料費や現場作業にあたったスタッフの人件費が該当します。間接費は複数の案件にまたがって発生する費用で、事務所の光熱費や管理担当者の人件費、車両の維持費などが含まれます。売上の増減に応じて変動する変動費と、売上に関わらず一定額が発生する固定費という分け方もあります。

原価計算を行う目的は、コストを削減する、見積り金額の根拠を示す、案件ごとの収支を把握するという3点に集約されます。特に出張訪問型サービス業では、同じ作業内容でも移動距離によって収益性が変わるため、案件単位で原価を可視化する意味は大きくなります。

原価計算の3つの種類 原価計算には、実際にかかった費用をそのまま集計する実際原価計算、あらかじめ決めた基準値で計算する標準原価計算、固定費を除いた変動費だけで計算する直接原価計算という3つの手法があります。個人事業主や小規模事業者であれば、まずは実際にかかった費用を素直に集計する実際原価計算から始めるのが現実的です。標準原価計算や直接原価計算は、案件数が増えて費用構造が安定してきた段階で検討すれば十分です。

出張訪問サービス業における原価の内訳

原価計算を解説する記事の多くは製造業を前提にしており、材料費と人件費、製造間接費という枠組みで説明が終わってしまいます。しかし清掃業や家事代行業、水道修理業のように現場へ出向いて作業する出張訪問型サービス業では、移動そのものが原価の一部になります。ガソリン代や高速代、移動にかかる時間の人件費まで含めて考えないと、実際の利益率を見誤ります。

人件費と移動コストの配分方法

人件費は、現場での作業時間だけでなく、移動時間も含めて時給換算するのが基本です。例えば時給1,500円のスタッフが、片道30分の移動を含めて1件あたり2時間かかる案件を担当した場合、作業時間1時間30分分の人件費に加えて、移動時間30分分の750円も原価に加える必要があります。

ガソリン代や高速代は、1日に複数件をまわる場合は距離やかかった時間で案件ごとに配分します。1日の移動費が合計3,000円で、3件を担当したのであれば、単純に3件で割って1件あたり1,000円を割り振る方法や、移動距離の比率で配分する方法があります。案件数が少ないうちは前者のシンプルな方法で十分です。

材料費の配分方法

清掃業であれば洗剤やクロスなどの消耗品、水道修理業であれば部材や工具の消耗分が材料費にあたります。案件ごとに使用量が異なる場合は、購入時の単価から1回あたりの使用量を割り出して配分します。例えば5,000円で購入した洗剤が20件分に相当するのであれば、1件あたりの材料費は250円です。細かい消耗品まで厳密に配分しようとすると手間がかかりすぎるため、主要な資材だけを対象にし、それ以外の消耗品は間接費としてまとめて扱う運用でも構いません。

人件費・移動費・材料費を合計すると、案件ごとの原価の全体像が見えてきます。例えば作業時間1時間30分分の人件費2,250円、移動時間30分分の人件費750円、ガソリン代など移動費1,000円、材料費250円という案件であれば、原価の合計は4,250円です。この案件の見積り金額が8,000円だとすると、原価率は約53%になります。移動時間の人件費750円とガソリン代など移動費1,000円を除いて計算すると原価は2,500円、原価率は約31%まで下がって見えてしまうため、移動コストを除外したまま見積りを組むと、実際より利益が出ていると錯覚しやすくなります。

エクセルでの原価計算のやり方

エクセルで原価計算を行う場合、案件ごとに1行を割り当てた一覧表を作るのが基本です。列には案件名、作業時間、時給、人件費、移動費、材料費、原価合計、売上、粗利、原価率を並べます。人件費の列は作業時間と時給を掛け合わせる関数、原価合計の列は人件費・移動費・材料費を合計する関数を入れておけば、案件を追加するたびに自動で計算されます。

原価率は原価合計を売上で割って算出します(=原価合計セル/売上セル)。列の書式をパーセント表示にしておくと、案件ごとの原価率が一目でわかり、原価率が高い案件だけを抜き出して見積り金額を見直すといった使い方ができます。案件数が増えてきたら、案件管理ツールと連動させて手入力の手間を減らすことも検討するとよいでしょう。

原価計算アプリを使う方法

エクセルは手軽に始められる一方で、案件が増えるほど入力漏れや計算式の崩れが起きやすくなります。原価計算アプリや案件管理ツールを使うと、案件ごとの人件費や移動費を自動で集計でき、複数のスタッフが同時に入力しても情報が食い違いません。

アプリを選ぶときは、移動費や移動時間を案件単位で記録できるか、見積書や請求書の作成と連動しているか、スタッフごとの稼働状況を後から確認できるかを確認しておくと、原価計算の精度を保ちながら日々の運用の手間を減らせます。案件・顧客管理から見積書・請求書の発行までを1つのツールでまかなえれば、原価の集計に使う時間そのものも減らせます。

業種別の原価率の目安

原価率は業種によって大きく異なります。人件費の比率が高い業種と、材料や部材の比率が高い業種では、同じ売上高でも手元に残る利益の割合はまったく違ってきます。出張訪問型サービス業の中でも、清掃業や家事代行業のように人の手による作業が売上の中心になる業種は、材料費よりも人件費と移動コストが原価の大部分を占める傾向があります。一方で水道修理業やリフォーム業のように部材を多く使う業種では、材料費の比率が上がりやすくなります。

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」や中小企業庁の「中小企業実態基本調査」でも、業種別の原価率や経費率を算出できるデータは公表されています。しかし清掃業や便利屋のように出張訪問型サービス業に絞ったカテゴリーでは、公的な統計が細かく分かれていないことが多く、他業種のデータをそのまま当てはめて自社の目安にするのは難しいのが実情です。

自社の原価率が高いか低いかを判断するには、同業他社の一般的な水準を探すよりも、自社の過去の案件データを蓄積して比較する方が実態に近い判断ができます。案件ごとに原価計算を続けていくと、自社にとって適正な原価率の範囲が見えてきます。

まとめ

  • 原価計算は、材料費や人件費などの直接費と、管理費などの間接費を案件ごとに集計する手法

  • 出張訪問型サービス業では、ガソリン代や高速代、移動時間の人件費まで原価に含めて考える

  • エクセルで管理する場合は、案件ごとに人件費・移動費・材料費・原価率を並べた一覧表を作る

  • 案件数が増えたら、原価計算アプリや案件管理ツールとの連動も検討する

  • 原価率の目安は業種によって大きく異なるため、自社の過去の案件データを蓄積して比較するのが確実

案件ごとの原価と利益を正確に把握できるようになれば、見積り金額の根拠を持って提示できるだけでなく、値引き交渉にも自信を持って対応できるようになります。

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