「作業後にお客様から連絡があり、『汚れが落ちていない』と指摘された。焦って対応したが、かえって関係が悪化してしまった…」
清掃業や設備メンテナンスなどの訪問サービスでは、どれだけていねいに作業しても、クレームが発生することがあります。大切なのは、クレームをゼロにすることではなく、「起きたときにどう動くか」をあらかじめ決めておくことです。
この記事では、クレームを受けたときの初動対応の手順と、同じ問題を繰り返さないための再発防止の仕組みを解説します。なお、クレームの引き金になりやすい訪問時のマナーについては「訪問先での身だしなみ・マナーが信頼につながる理由」もあわせてご覧ください。
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クレーム対応がうまくいかない3つの原因
初動が遅い
お客様が不満を感じているとき、時間が経てば経つほど怒りは大きくなります。「後で対応しよう」と先延ばしにすると、最初は小さな指摘だったものが、大きなトラブルに発展しがちです。
たとえば、作業完了後にお客様から「キッチンのレンジフードに拭き残しがある」と連絡があったとします。その日のうちに対応すれば「すぐ来てくれた」と好印象になります。しかし翌日以降に持ち越すと、「連絡したのに何もしてくれない」という不信感に変わります。
言い訳から入ってしまう
「それは作業範囲に含まれていなかったので…」と理由を先に説明してしまうと、お客様は「自分の話を聞いてくれない」と感じます。正当な理由であっても、伝える順番を間違えると逆効果になります。
お客様にとって大切なのは「なぜそうなったか」よりも、「自分の困りごとを理解してもらえたかどうか」です。まず共感し、そのあとで事実を確認する。この順番を守るだけで、対応の印象は大きく変わります。
【ヒヤリハット】正論から入って大炎上した話
あるエアコンクリーニングの現場で、作業後にお客様から「壁紙が汚れている」と連絡がありました。確認したところ、その汚れは作業範囲外の場所にあり、もともと存在していた可能性が高いものでした。
そこで「こちらは作業範囲に含まれておりませんので…」と正論から伝えたところ、お客様は激怒。「あなたが来る前にはなかった」「責任を取ってほしい」とエスカレートし、最終的に全額返金と壁紙の補修費用まで請求される事態になりました。
振り返ると、最初に「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。確認させてください」と一言添えてから事実確認に入っていれば、ここまで大きなトラブルにはならなかったはずです。正しいかどうかよりも、「伝える順番」が決定的に重要だと学んだ経験です。
同じクレームが繰り返される
一度対応して終わりにしてしまい、原因を振り返らないケースです。同じお客様から、あるいは別のお客様から同じ内容の指摘を受けると、事業者としての信頼は大きく損なわれます。
「エアコンクリーニング後に水が垂れた」という指摘が2回あれば、それは養生の手順に問題がある可能性が高いです。パターンを見つけて対策を打たなければ、同じミスは何度でも起きます。
クレームを受けたときの初動対応 4ステップ
クレーム対応の流れを以下のステップで整理しておきましょう。
ステップ | やること | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
1. 傾聴 | お客様の話を最後まで聞く | 5〜10分 |
2. 事実確認 | いつ・どこ・何が問題かを把握する | 5分 |
3. 対応方針の提示 | いつ・どう対応するかを伝える | 即日 |
4. フォロー | 対応後に翌日連絡を入れる | 翌日 |
ステップ1 まず聞く。全部聞く
お客様の話を最後まで聞くことが最優先です。途中で「でも」「しかし」と口を挟まず、相槌を打ちながら話を受け止めましょう。
「そうだったのですね。ご不便をおかけして申し訳ございません」
この一言だけで、お客様の気持ちはかなり落ち着きます。話を聞いてもらえたという実感が、その後の対応をスムーズにします。逆に、ここで反論してしまうと、お客様は「この人には何を言っても無駄だ」と感じ、以降の対話が成り立たなくなります。
ステップ2 事実を確認する
お客様の話を聞いた上で、「念のため、状況を正確に確認させてください」と事実確認に入ります。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
いつ気づいたか(作業直後か、翌日か、数日後か)
どこが問題か(「キッチンの換気扇の左奥」など具体的に特定する)
どのような状態か(汚れが残っている、傷がある、異臭がするなど)
写真を撮っていただけるか(電話の場合、写真があると現場確認がスムーズ)
ここで重要なのは、お客様を疑うニュアンスを出さないことです。あくまで「正確に対応するための確認」というスタンスを貫きましょう。
ステップ3 対応方針を伝える
事実を確認したら、できるだけ早く「いつ・どのように対応するか」を伝えましょう。
状況 | 対応例 |
|---|---|
再作業が必要 | 「○月○日に改めてお伺いし、対応させていただきます」 |
社内確認が必要 | 「確認の上、本日中に折り返しご連絡いたします」 |
作業範囲外 | 「確認したところ今回の範囲外でしたが、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」 |
物損が発生 | 「修理費用は弊社で対応させていただきます。保険会社と連携して進めます」 |
※物損対応を約束する際は、自社が加入している賠償責任保険の適用範囲を事前に確認してください。保険でカバーされない事故もあるため、安易に「全額弊社で」と伝える前に保険会社への連絡を行いましょう。
いずれの場合も、「次に何をするか」を明確にすることがポイントです。「確認しておきます」で終わると、お客様は「本当に対応してくれるのだろうか」と不安が残ります。
ステップ4 対応後にフォローする
再作業やお詫びの対応が終わったら、必ず翌日にフォローの連絡を入れましょう。
「昨日は改めてお伺いさせていただきありがとうございました。仕上がりにご不安な点がございましたら、遠慮なくお申し付けください」
このフォローがあるかないかで、お客様の印象は大きく変わります。実際に、クレーム対応後のフォロー連絡がきっかけで「ていねいな会社だ」と感じ、定期契約につながるケースもあります。
再発防止の仕組みをつくる
クレームはお詫びして終わりではありません。同じミスを防ぐ「仕組み化」こそが、事業の信頼を積み上げるために重要です。
クレーム記録シートを用意する
クレームが起きたら、以下の項目を簡潔にメモしておきましょう。紙のノートでもスマホのメモアプリでも構いません。
記録項目 | 記入例 |
|---|---|
日付 | 2026年5月10日 |
お客様名 | 田中様 |
作業内容 | エアコンクリーニング |
クレーム内容 | 分解洗浄後、送風口から水滴が垂れてきた |
原因 | 内部の乾燥が不十分だった |
対応 | 翌日再訪問し、再乾燥と動作確認を実施 |
改善策 | 作業完了後に10分間の送風運転を標準手順に追加 |
記録は詳細でなくて構いません。重要なのは「書く習慣」を作ることです。
パターンを見つける
記録が3〜5件たまったら、共通点がないか振り返りましょう。
特定の作業内容に偏っていないか(エアコン関連が多い、浴室関連が多いなど)
特定のスタッフに偏っていないか
「説明不足」が原因のケースが多くないか
特定のお客様層(新規・高齢者など)に集中していないか
パターンが見えれば、対策を打つべきポイントが明確になります。
作業前の確認を強化する
クレームの多くは、作業前の「期待値のすり合わせ不足」から生まれます。
作業範囲を書面やメッセージで提示し、お客様に確認していただく
「ここまでが今回の作業範囲です。ここから先は別途お見積もりになります」と明示する
作業開始前に現場の状態を写真で記録する(既存の傷や汚れの証拠として)
作業完了時に、お客様と一緒に仕上がりを確認し、その場でOKをいただく
この4つを徹底するだけで、「聞いていない」「思っていたのと違う」系のクレームは大幅に減らせます。
まとめ
クレームは、対応次第で「信頼を失うきっかけ」にも「信頼を深めるきっかけ」にもなります。
ステップ1 — まず話を最後まで聞き、お詫びの一言を伝える
ステップ2 — 感情ではなく事実ベースで状況を把握する
ステップ3 — 「いつ・どう対応するか」を明確に伝える
ステップ4 — 対応後に翌日フォロー連絡を入れる
再発防止 — クレーム記録シートでパターンを見つけ、作業前の確認を強化する
「クレームが来たらどうしよう」と不安に思うより、「来たときの手順が決まっている」状態のほうが、ずっと安心して現場に向かえます。
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