高齢化と核家族化が進み、一人暮らしだった親族が亡くなったあと、遺品整理を誰に頼めばよいかわからないという相談が増えています。この需要の高まりを受けて、遺品整理業での独立を考える人も年々増えています。ただし、実際に開業しようとすると足踏みしてしまう人も少なくありません。資格は必要なのか、初期費用はいくらかかるのか、トラブルに巻き込まれないか、不安の種は尽きないものです。
この記事では、遺品整理業を個人事業主として開業する際に必要な届出や許可を整理します。車両や清掃用品まで含めた実際の初期費用の目安を示し、遺品整理業で実際に起きているトラブルとその対処法もあわせて具体的に解説します。開業準備の全体像を把握したうえで、安心して一歩を踏み出せるようになります。
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遺品整理業の開業に資格は必要なのか
遺品整理業そのものを始めるにあたって、必ず取得しなければならない国家資格はありません。開業届を税務署に提出すれば、誰でもその日から遺品整理業を名乗って営業を始められます。
ただし、資格がなくても始められることと、資格なしで信頼を得られることは別の問題です。遺族から大切な故人の持ち物を預かる仕事である以上、専門知識と誠実さを客観的に示せるかどうかは、受注の場面で大きな差になります。代表的な民間資格が、一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する遺品整理士と遺品査定士です。遺品整理士は遺品整理に関する法律知識やマナーを学ぶ資格、遺品査定士は遺品の中から価値のあるものを見極める知識を学ぶ資格です。どちらも通信講座で、受講期間の目安は2か月程度、受講料は教材費込みで3万円台が目安とされています。正確な金額は、申し込み前に協会へ直接確認してください。
開業に必要な届出と許可
個人事業の開業届と青色申告承認申請書
個人事業主として遺品整理業を始める場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を管轄の税務署に提出します。2026年1月1日以後に事業を始めた場合、提出期限は事業を始めた年の所得税確定申告期限までです(国税庁の解説)。あわせて「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておくと、税制上のメリットを受けられます。最大65万円の青色申告特別控除や、赤字を3年間繰り越せる制度などが代表例です。青色申告承認申請書は、原則として業務開始から2か月以内の提出が必要です。
古物商許可が必要になるケース
遺品の中から時計や骨董品、貴金属など価値のあるものを買い取り、それを転売する場合は、古物営業法に基づく古物商許可が必要です。営業所を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に申請し、申請手数料は19,000円です(警視庁公式サイト)。標準処理期間は40日程度とされているため、開業スケジュールには審査待ちの期間も見込んでおきます。遺品を無償で引き取って処分するだけで、買取や転売を行わない場合はこの許可は不要です。
もう一つ注意したいのが、家庭ごみとして遺品を廃棄する場合に関わる一般廃棄物収集運搬業許可です。この許可は市区町村が交付するもので、新規取得は全国的に非常に難しいのが実情です(一新総合法律事務所東京事務所の解説)。開業直後の個人事業主が自力で許可を取るのは現実的ではありません。多くの遺品整理業者は、この許可をすでに持っている廃棄物処理業者と提携し、収集運搬だけを委託する形で運用しています。
開業にかかる実際の初期費用
「資金が必要」という説明だけでは開業準備は進みません。実際にどの項目にいくらかかるのか、目安の金額で確認します。
車両(中古の軽トラックまたはバン) 30万円〜60万円
清掃用品・資材(防塵マスク、消毒液、養生シート、梱包資材、台車など) 5万円〜10万円
作業着・安全靴などの装備 2万円〜3万円
古物商許可の申請手数料(買取・転売を行う場合のみ) 19,000円
損害賠償保険(作業中の破損・事故に備える保険、年間) 2万円〜5万円
ホームページ制作費 自作なら数千円、外注なら10万円〜30万円
ポータルサイト掲載費・広告費(月額) 3万円〜10万円
これらを合算すると、開業時にまとまって必要な初期費用は50万円〜100万円程度です。軌道に乗るまでの数か月分の運転資金まで含めると、100万円〜300万円程度を見込んでおくと安心です。中古車両を選ぶ、清掃用品をまとめ買いする、ホームページを自作するなど削れる費用と、損害賠償保険のように削るべきでない費用を分けて考えることが重要です。
遺品整理業でよくあるトラブルと対処法
国民生活センターには、遺品整理サービスに関する相談が2013年度の73件から2017年度には105件へと増加傾向で寄せられています(国民生活センターの発表)。寄せられる相談の多くは、契約前の説明不足による事後請求、高額なキャンセル料の請求、不当な追加請求、遺品の処理方法をめぐる不透明さの4つに分類されます。
典型的なのが、電話やメールだけで「1DKなら3万円程度」とおおまかな見積もりを伝えるケースです。作業当日になって「荷物が想定より多かった」という理由をつけ、見積もりの2倍近い金額を請求します。ほかにも、遺族が形見として残したいと考えていた写真や着物を、確認を取らずに廃棄してしまうトラブルも報告されています。
こうしたトラブルを避けるためには、次の対応を徹底します。
見積もりは必ず訪問のうえで作業内容ごとに書面で提示し、電話やメールだけの概算見積もりで契約しない
作業前後の室内を写真で記録し、追加料金が発生する場合は理由と金額を事前に説明する
残す遺品と処分する遺品を事前にリストで確認し、遺族の合意を取ってから作業に入る
契約書にキャンセル料の条件を明記し、口頭だけで済ませない
依頼者側にも消費生活センター(電話番号188)という相談窓口があることを事前に伝えておくと、事業者としての誠実さが伝わり、信頼につながります。
開業後の受注を増やす方法
開業直後は実績がないため、オンラインとオフラインの両方から接点を増やす必要があります。
オンラインでは、自社ホームページとGoogleビジネスプロフィールの整備が基本です。地域名と遺品整理を組み合わせて検索したときに情報が見つかる状態を作り、遺品整理のポータルサイトへの掲載や、SNSでの作業実績の発信も並行して行います。
オフラインでは、不動産会社、司法書士、葬儀社、介護施設など、遺品整理のニーズに直接触れる業種との連携が効果的です。相続や退去の相談を受けた際に紹介してもらえる関係を作っておくと、広告費をかけずに安定した受注につながります。地域のチラシやポスティング、既存顧客からの口コミも、遺品整理業では依然として有効な集客手段です。
受注が増えてくると、案件ごとの見積もり内容や訪問日程、請求状況が個人の記憶やノートだけでは管理しきれなくなります。案件と顧客の情報を一つの画面で把握できる状態を早い段階から作っておくことが、トラブル防止と受注拡大の両方につながります。
まとめ
遺品整理業自体に必須の国家資格はないが、遺品整理士や遺品査定士などの民間資格が信頼獲得につながる
買取・転売を行う場合は古物商許可、家庭ごみの廃棄には一般廃棄物収集運搬業許可が関わり、後者は業者との提携が現実的
開業時の初期費用は50万円〜100万円程度、運転資金を含めると100万円〜300万円程度を見込んでおく
国民生活センターにも報告される不当請求トラブルを避けるには、訪問見積もりの書面化と遺族との事前確認が欠かせない
受注拡大にはオンラインとオフライン両方の接点づくりと、関連業種との連携が効果的
遺品整理業は、資格や許可、資金、信頼づくりのどれか一つが欠けても事業として続きません。この記事で紹介した内容を一つずつ確認しながら、開業準備を進めてください。
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