見積書を出して契約が決まったのに、次のステップの発注書は口頭やメールで済ませてしまっている、という方は多いのではないでしょうか。取引先から「発注書を送ってください」と言われて、Wordやノートに手書きで慌てて作った経験がある方もいるはずです。
発注書は、見積書と請求書に挟まれているせいか、書式やテンプレートがあまり整理されていない書類です。この記事では、発注書とは何か、見積書・請求書とどう違うのかを整理したうえで、そのままコピーして使える無料の発注書テンプレート(スプレッドシート・エクセル)と、実際の書き方を解説します。
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発注書とは?見積書・請求書との違い
発注書とは、発注者が受注者に対して「この内容・金額で正式に依頼します」という意思を示す書類です。清掃業や電気工事業などの出張訪問型サービス業では、見積書を提示して内容に合意したあと、実際に作業を依頼する段階で発注書を発行します。作業が完了したら、今度は代金を請求するための請求書を発行するという流れです。
つまり、見積書・発注書・請求書は同じ案件の中で役割が異なる3つの書類です。見積書は「いくらかかるか」を提示する書類、発注書は「この内容で依頼します」という発注者側の意思表示、請求書は「作業が終わったのでこの金額を支払ってください」という受注者側からの請求です。見積書と請求書の違いはこちらの記事でも詳しく解説しています。
発注書を発行するタイミング
発注書は、見積書の内容に発注者が合意し、正式に作業を依頼すると決めたタイミングで発行します。口頭やメールのやり取りだけで作業を進めてしまうと、金額や作業範囲の認識が食い違ったときに「言った言わない」のトラブルになりやすくなります。発注書を1枚交わしておくことで、契約内容の証拠として残すことができます。
発注書に法的な発行義務はある?
通常の商取引では、発注書の発行そのものに法律上の義務はありません。民法上、契約は当事者の合意があれば口頭でも成立するためです。
ただし、資本金や従業員数などの要件を満たす下請取引には、取適法(旧下請法、2026年1月施行)が適用され、発注者側に書面の交付義務が課されます。自分の取引がこの対象に当たるかどうか不安な場合は、取引先の規模や契約内容を確認しておくと安心です。
対象外の取引であっても、発注書を発行しておくメリットは大きいです。作業内容や金額を書面で残しておくことで、口約束によるトラブルを未然に防げます。
発注書に記載すべき必須項目
発注書には、法律で定められた統一フォーマットがあるわけではありません。ただし、実務上あいまいさをなくすために、以下の項目は必ず記載しておきましょう。
発注者・受注者の基本情報
発注書番号(管理用の通し番号)
発行日
発注先(受注者)の名称・住所
発注元(自社)の名称・住所・連絡先
件名・案件名
参照する見積書番号
参照する見積書番号を記載しておくと、あとから見積書と発注書を突き合わせる際にすぐ確認できます。案件が増えてくると、この一言があるかどうかで確認作業の手間が大きく変わります。
案件・作業内容と金額の項目
No.(明細の通し番号)
品目・作業内容
数量
単位
単価
金額(数量×単価で自動計算)
小計
消費税
合計金額
支払条件・支払期日
納期・納品場所
特記事項
金額が4桁以上になる場合は、24,000円のようにカンマ区切りで表記すると視認性が上がります。
インボイス制度に対応するために追加したい項目
インボイス制度において、適格請求書として登録番号の記載が必須になるのは請求書です。発注書に登録番号を記載する法律上の義務はありません。ただし、取引先が事前に登録番号を確認したいと考えるケースもあるため、発注書の段階で自社の登録番号を記載しておくと、後工程の確認の手間を減らせます。軽減税率の対象品目が混在する取引の場合は、税率ごとに区分して金額を記載しておくと親切です。
無料の発注書テンプレート(スプレッドシート・エクセル)
発注書を毎回ゼロから作るのは手間がかかります。ここでは、そのままコピーして使える無料の発注書テンプレートを、Googleスプレッドシート版とエクセル版の両方でご用意しています。
見積書・請求書についても無料ツールを公開しています。見積書生成ツールや見積書テンプレート、請求書生成ツールを組み合わせれば、見積書から発注書、請求書までの一連の書類を同じ考え方のフォーマットでそろえられます。
テンプレートの使い方
Googleスプレッドシート版テンプレート(コピーしてご利用ください)、エクセル版テンプレート(ダウンロード)をご用意しています。1シート目の「使い方」を確認したうえで、発注書のシートに案件情報や金額を入力していきます。数量と単価さえ入力すれば、金額の列は自動で計算される仕組みになっています。
スプレッドシート版とエクセル版はどちらを使うべきか
複数人で発注書を確認したり、外出先のスマートフォンから内容をチェックしたりする機会が多い場合は、クラウド上で共有できるスプレッドシート版が向いています。一方、社内のパソコンだけで完結させたい、印刷して手元で確認したいという場合は、使い慣れたエクセル版のほうが扱いやすいはずです。どちらも記載項目は同じなので、業務のスタイルに合わせて選んでください。
発注書の書き方3ステップ
見積書の内容をそのまま転記する
すでに見積書を発行している案件であれば、案件名・作業内容・数量・単価は見積書からそのまま転記します。ゼロから金額を再計算する必要はありません。見積書の段階で確定した内容を、発注書にそのまま反映させることが基本です。
数量・単価・金額を入力する
品目ごとに数量と単価を入力すると、金額の列が自動で計算されます。小計・消費税・合計金額もあわせて確認し、見積書の金額と一致しているかをチェックしてください。金額がずれている場合、見積書提示後に条件が変わった可能性があるため、取引先とあらためて認識をすり合わせておくと安心です。
PDF化して取引先へ送付する
入力が終わったら、ファイルをPDFに変換して取引先に送付します。スプレッドシートであれば、ファイルからダウンロード、PDF形式を選択するだけで変換できます。メールに添付する際は、件名に案件名と発注書番号を入れておくと、取引先側でも管理しやすくなります。
発注書を作るときによくある疑問
発注書に印鑑は必要ですか 法律上、発注書への押印は義務付けられていません。契約は当事者の合意があれば口頭でも成立します。ただし、日本の商習慣として押印を求める取引先は少なくないため、相手の運用に合わせて対応するのが実務的です。
発注書の保存期間はどのくらいですか 税法上、個人事業主は原則5年(消費税の課税事業者は7年)、法人は7年の保存が求められます(国税庁タックスアンサーNo.5930)。判断に迷う場合は長いほうの期間に合わせて保存しておくと安心です。
電子データのまま保存してもいいですか 電子帳簿保存法により、メールやクラウドサービスを通じてやり取りした発注書などの電子取引データは、紙に印刷せず電子データのまま保存することが原則になっています。スプレッドシートやPDFで作成した発注書をそのままクラウド上に保管しておく運用は、この点でも理にかなっています。
見積書・発注書・請求書をバラバラに管理する限界
見積書はGoogleドライブ、発注書はエクセルファイル、請求書は別のクラウドサービスというように、書類ごとに管理場所が分かれていると、案件が増えるほど突合作業が負担になります。「この発注書に対応する見積書はどれだったか」を探すだけで数分かかってしまうケースも珍しくありません。
案件ごとに見積書・発注書・請求書をひとつの画面で管理できれば、転記や突合の手間がなくなり、金額の入力ミスも防ぎやすくなります。書類を作るたびに別々のファイルを探す時間を、現場の作業や次の案件の準備に使えるようになります。
まとめ
発注書は、見積書に合意したあとの「正式に依頼します」という意思表示の書類
通常の取引に法的な発行義務はないが、取適法の対象取引では交付義務がある
印鑑は法律上必須ではないが、取引先の慣習に合わせて対応するのが実務的
保存期間は個人事業主が5年(課税事業者は7年)、法人が7年が目安
見積書・発注書・請求書を一元管理できれば、突合や転記の手間を減らせる
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