現場で経験を積むほど、「そろそろ自分でやってみたい」と思うようになる方は多いのではないでしょうか。第二種電気工事士の資格を取って数年、先輩や社長の仕事ぶりを見ながら、自分なら値段設定も段取りももっとうまくできると感じる瞬間もあるはずです。ただ、いざ独立を調べ始めると、電気工事士の資格だけで開業できるのか、電気工事業の登録とは何なのか、次々に疑問が出てきます。この記事では、電気工事士としての経験を独立にどう活かせるか、開業に必要な資格と手続きを整理して解説します。
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電気工事士とは?第二種と第一種の違い
電気工事士は、住宅やビルの電気配線工事を行うために必要な国家資格です。第二種と第一種があり、扱える工作物の範囲と取得までの流れが異なります。第二種電気工事士の受験資格には年齢・学歴・実務経験の条件がなく、誰でも受験できます(電気技術者試験センター)。第一種電気工事士も受験自体に実務経験は求められませんが、免状の交付には3年以上の実務経験が必要になる点が大きな違いです(電気技術者試験センター)。
第二種電気工事士でできる作業範囲
第二種電気工事士は、一般用電気工作物の工事を行えます。一般用電気工作物とは、600V以下で受電する一般住宅や小規模な店舗の屋内配線設備のことです。多くの電気工事店で最初に取得する資格であり、住宅の配線工事やコンセント増設、照明器具の設置など、日常の電気工事業務の大部分をカバーします。独立を考えている方の多くは、すでにこの資格を持って現場経験を積んでいる状態からスタートすることになるでしょう。
第一種電気工事士が必要になるケース
第一種電気工事士は、一般用電気工作物に加えて自家用電気工作物の工事も行えます。自家用電気工作物とは一般用電気工作物以外の工作物のことで、工場やビルなど比較的大規模な受電設備が該当します。オフィスビルや店舗ビルの改修、工場の設備工事など対応できる仕事の幅を広げたいなら、第一種電気工事士の取得が必要になります。独立後に法人・事業者向けの案件を増やしたい方は、早めに取得を検討しておくとよいでしょう。
電気工事士の資格だけで独立できる?
結論から言うと、電気工事士の資格を持っているだけでは、個人で電気工事業を開業することはできません。資格は「電気工事の作業をする人」に必要なものであり、「電気工事業を営む」ためには別の手続きが必要になるからです。ここを混同したまま準備を進めてしまうと、開業直前になって手続き漏れに気づくことになりかねません。
個人で電気工事を請け負う場合に必要な条件
個人で電気工事を請け負って報酬を得る場合、電気工事士免状に加えて、事業を行う都道府県への「電気工事業の登録」または「通知」が必要です。これは電気工事士本人の資格とは別の、事業者としての手続きです。免状を取得した時点ではまだ準備の半分であり、開業には登録・通知の手続きを済ませる必要があると考えておきましょう。
「電気工事業の登録」が必要になる理由
電気工事業の登録・通知制度は、建設業許可の有無と扱う工事の種類によって、次の4つに分かれます(経済産業省 関東東北産業保安監督部)。
建設業許可なしで一般用電気工作物の工事を行う場合は「登録電気工事業者」
建設業許可なしで自家用電気工作物のみの工事を行う場合は「通知電気工事業者」
建設業許可ありで一般用電気工作物の工事を行う場合は「みなし登録電気工事業者」
建設業許可ありで自家用電気工作物のみの工事を行う場合は「みなし通知電気工事業者」
独立したばかりで建設業許可を取得していない状態から始める方がほとんどのため、まずは登録電気工事業者と通知電気工事業者のどちらに該当するかを確認するところから始めます。
電気工事業を開業するための3つの手続き
電気工事業として独立するまでの流れは、大きく3つの手続きに分けて考えると整理しやすくなります。
電気工事士免状の取得
最初に必要なのが電気工事士免状です。第二種電気工事士試験に合格し、免状の交付を受けます。独立してすぐに大きな法人案件を狙わないのであれば、第二種電気工事士のみでも一般住宅向けの電気工事業として開業すること自体は可能です。ただし対応できる工事の幅を考えると、第一種電気工事士の取得も並行して検討したいところです。
電気工事業の登録・通知(都道府県への手続き)
免状を取得したら、事業を行う都道府県の担当窓口で電気工事業の登録または通知の手続きを行います。登録には主任電気工事士の選任や必要書類の準備が必要になるため、手続き自体に一定の準備期間を見ておく必要があります。詳しい許認可の全体像は、電気工事で開業するためには?資格や許認可を徹底解説!でも紹介していますので、あわせて確認してみてください。
建設業許可が必要になるケース
1件あたりの請負金額が税込500万円以上になる電気工事を請け負う場合は、軽微な建設工事の範囲を超えるため建設業許可が必要になります(国土交通省)。逆に、1件500万円未満の工事のみを請け負う個人事業主としてのスタートであれば、建設業許可がなくても電気工事業の登録・通知だけで開業できます。まずは電気工事業の登録から始め、事業が育ってきたタイミングで建設業許可の取得を検討する進め方が現実的です。
独立に必要な「主任電気工事士」の実務経験
一般用電気工作物の工事を行う登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者は、営業所ごとに主任電気工事士を置く必要があります。主任電気工事士そのものは資格ではなく、営業所内で電気工事の管理を担う立場を指す言葉です(東京都環境局)。誰を主任電気工事士にできるかは、持っている電気工事士の種類によって条件が変わります。
第一種電気工事士の場合
第一種電気工事士であれば、そのまま主任電気工事士になれます。第一種電気工事士免状の交付を受ける時点ですでに3年以上の実務経験が求められているため、主任電気工事士への選任にあたって追加の実務経験証明書は不要です(愛知県)。独立の手続きをできるだけシンプルにしたいなら、第一種電気工事士を取得しておくメリットは大きいといえます。
第二種電気工事士+実務経験の場合
第二種電気工事士の場合は、免状の交付を受けた後、電気工事業者のもとで3年以上の実務経験を積む必要があります。この実務経験は書類(実務経験証明書)で証明する必要があり、証明の対象になるのは登録・届出済みの電気工事業者のもとでの一般用電気工作物の工事に限られます。第二種電気工事士のまま独立を目指す方は、この3年という実務経験の年数を見据えて、今の勤務先での経験を積んでおくとよいでしょう。
電気工事士資格の取得方法と難易度
これから電気工事士を取得する方、第二種から第一種へのステップアップを考えている方向けに、試験の受験資格と難易度の目安を紹介します。
試験の受験資格と申込方法
第二種・第一種のいずれも、受験資格に年齢・学歴・実務経験の制限はなく、誰でも申し込みできます(電気技術者試験センター)。試験は学科試験と技能試験の2段階で行われ、学科試験に合格した人(または学科試験免除者)が技能試験に進みます。申込は電気技術者試験センターの公式サイトから行い、例年上期・下期の年2回実施されます。
合格率・勉強方法の目安
令和7年度の実績では、第二種電気工事士の学科試験合格率は56.6%、技能試験合格率は71.8%でした。第一種電気工事士は学科試験合格率57.3%、技能試験合格率58.1%です(いずれも電気技術者試験センターの公表データ)。学科試験は独学でのテキスト学習が中心になり、技能試験は実際に工具を使った配線作業の反復練習が欠かせません。現場で日常的に電気工事に触れている方なら、技能試験は業務の延長として練習しやすいはずです。
独立後の案件・スケジュール管理の課題
資格と登録の手続きを終えて実際に独立すると、今度は現場作業とは別の悩みが出てきます。見積もりの作成、案件ごとのスケジュール調整、請求書の発行、入金の確認まで、これまで会社が担っていた事務作業をすべて自分でこなす必要が出てくるからです。特に複数の現場を並行して抱えるようになると、手帳やノートだけでの管理では予定の重複や連絡漏れが起きやすくなります。電気工事業向けの案件管理の工夫については、【電気工事業者向け】エクセルとITツールを駆使した効率的案件管理の方法でも具体的に紹介しています。
顧客ごとの過去の工事履歴や連絡先の管理も、独立後は自分で仕組みを作る必要があります。【電気工事業者向け】CRMを活用した顧客管理方法もあわせて参考にしながら、現場作業と事務作業のバランスを早い段階から意識しておくと、独立後の負担を減らせます。
まとめ
電気工事士は資格であり、事業として独立するには別に電気工事業の登録・通知が必要
第二種電気工事士は一般用電気工作物、第一種電気工事士は自家用電気工作物まで対応できる
主任電気工事士になるには、第一種は実務経験証明が不要、第二種は3年以上の実務経験が必要
1件500万円以上の工事を請け負う場合は建設業許可が別途必要になる
独立後は現場作業に加えて見積書・案件管理・請求書発行までを自分で担う必要がある
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